相続 悩みの相談室

【ご相談・その1】
2018.11.7

兄が家督相続を主張して、親の相続財産について何も教えてくれません。

どうしても教えてくれないなら、内容証明や調停で明らかにしましょう。

同居している子供が、ほかの兄弟に親の財産を教えないという話は、よく聞きますね。
また、地方によってはいまだに戦前の家督相続の慣習が残っていて、長男以外の兄弟が相続放棄をさせられることも多いと聞きます。今は個人主義の世の中なのに、不公平ですね。
「私にも相続権があるから、財産がどうなっているのか教えて」と聞くと、親戚づきあいができなくなるのだとか。つらいところですが、親戚づきあいがなくなっても、相続できそうな財産が多くて、居心地が悪いだけで特に実害がないのなら、思いきって聞いてみるのもいいと思います。
あなたが法定相続人なら、堂々と聞く権利があります。ほかの兄弟とも同盟を結んでおきましょう。「遺言書はあった? 財産ってどうなっているのかしら?」と知らぬふりでさらっと聞くか、手紙で礼儀正しく尋ねてみます。 聞かなくても自分で調べられそうだったら、調べる方法があります。

自分では調べられなくて、どうしても遺産の状況を教えてくれない場合は、内容証明を送るという手もあります。内容証明にする理由は、何を伝えたのかが証拠として残るので、こちらの本気度を示すことができるからです。
内容証明とは、「何月何日、あて先に確かにその内容の書面を送りました」と証明される郵便のことです。紙や筆記用具は自由ですが、書き方に制約があります。専用の原稿用紙に書き方の説明書がついた市販のセットを使えば、簡単に書けます。
ただし内容証明を送ると、どうしても角が立つのは避けられません。ものものしい感じがして、たいていの人は驚きます。けんか腰に感じる人もいるでしょうから、そのあたりは見極めて送ってくださいね。相手が驚いて情報を開示してくれればよし、それでも教えてくれなければ、家庭裁判所の調停で明らかにするように求めましょう。調停を申し立てるなら、弁護士に代理人を依頼することもできます。ただし財産の開示を相手方に求める場合、「ほかに財産があるはず」と主張する人のほうが、その根拠を説明する必要があります。裁判所が相続財産を探してくれるわけではないので、申し立てるなら事前の準備も抜かりなく。

内容証明の代表的な書き方の例文をご紹介しておきますので、参考にしてみてください。

【遺産の開示を求める 内容証明例文】

ご通知

○○様

00年00月0日

通知人 ○○

冠省

 亡き○○(以下、「被相続人」といいます)の相続手続きについて、先日来、遺産や遺言の有無などについて開示をお願いしておりましたが、いまだに何らのご連絡もいただいておりません。
 ○○銀行において被相続人名義の預金を調査したところ、被相続人の死亡前後に〇〇万円が引き出されていることが判明しました。遺産の開示にあたっては、上記金員の使途や保管状況についても明らかにしていただきますようお願いします。
○月末までに開示していただけない場合には、家庭裁判所に調停の申し立てをいたします。通知人としては、話し合いによる円満な解決を希望していますので、よろしくお願いします。       

草々