相続 悩みの相談室

【ご相談・その4】
2018.11.19

義父を介護したのですが、その分、少しでも義父の財産をもらえますか?

相続はできませんが、遺言書で遺贈してもらうか寄与分を主張することができます

実の親でも大変なのに、お義父さんの介護は大変ですね。人にはわからない苦労があると思います。その苦労の分を、相続で考慮してもらいたいお気持ちはよくわかります。でも残念ながら、法定相続ではお義父さんの遺産を相続する権利はありません。
ごくまれなケースとして、たとえばお義父さんが亡くなり、相続手続きをしないまま旦那さんが亡くなった場合は、お嫁さんが相続することができます。昔は、自宅や土地などの名義変更をしないままにしていることがよくありました。そういう例外を除けば相続することはできませんから、介護した分については、お義父さんに財産を遺贈してもらう遺言書を書いてもらうことですね。それはちょっと無理……というのであれば「寄与分」の主張ができる可能性もあります。

寄与分とは、故人(被相続人)の財産を維持するためや、財産をふやすことについて特別な寄与・貢献をした相続人は、その貢献に応じた金額を、相続分に上乗せできるというものです。

まず、寄与分は法定相続人にしか認められないので、旦那さんの寄与分として主張することになります。さらに寄与として認められるためには「特別な寄与」でなければなりません。寄与分の例としては、故人の「事業を手伝った」「事業のための資金を援助した」「老後の生活の面倒を見た」「介護をした」などさまざまなものがありますが、おもに「労力」と「お金」をどれくらい提供したかで考えます。
寄与分の算定をするには、遺産の総額から寄与分を引いた金額で、相続人全員の相続分を計算し、最後に寄与した人に寄与分を加えて計算します。このように寄与分は金額に換算することが必要で、通常の介護ではなかなか認められにくいのが実情です。

あなたの場合は介護ですから、ヘルパーさんに頼めばお金がかかるところを、あなたが介護してお金を維持したという解釈になります。寄与分は、遺産分割協議の話し合いで認められるかどうかが決まりますが、認められなければ家庭裁判所の「寄与分を定める処分調停」を申し立てることができます(この場合、旦那さんが申立人になります)。 ただし調停で話し合いがつかず、審判になった場合には、寄与したという客観的な証拠が必要になります。精神的、肉体的な苦労や、心情的なことは評価の対象になりません。
客観的証拠とは、たとえば要介護度はいくつで、ヘルパーさんは1日に何時間必要だったのか、それによって維持されたお金はいくらか、などといったことです。これらを証明するのは結構大変で、認められないこともあります。将来、寄与分を申し立てる予定があるなら、介護にかかった費用はすべて領収書をもらっておくなど、客観的な資料をできるだけたくさん集めておきましょう。

※2019年以降に予定される民法の改正により、義理の親を介護した嫁の貢献も特別寄与として認められるようになります。
従来は、嫁は相続人でないため、介護の貢献が特別寄与として認められませんでしたが、親族であれば、特別寄与料の請求ができる規定が新設されます。