遺産相続の基礎知識

元気なうちに財産の管理を 成年後見制度の利用

将来、認知症や痴呆になったらどうしよう。誰が収入や財産を管理してくれるのだろう。そんな不安を抱かれる方は少なくないと思います。中には年金だけを子供がとりこんで、親の面倒を見ないという経済的虐待に当たるケースも・・・。
そういった問題が起こるのを防ぐために、元気なうちに財産の管理方法などを決めておく方法(後見制度)があります。

後見制度の種類

  1. (1)成年後見
  2. (2)保佐
  3. (3)補助
  4. (4)任意後見
  5. (5)財産管理契約

(1)成年後見

選任の要件

成年後見人が選任されるのは、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある場合、つまり精神上の障害により、自分の行為の結果について合理的な判断をする能力のない状態が大部分の時間において継続する場合に申立により選任されます。

成年後見人の権限

成年被後見人の行った法律行為は、日用品の購入その他日常生活に関する行為を除き、取り消すことができます。
また、成年後見人は成年被後見人のために包括的代理権およびその財産の管理権を有し、成年被後見人の権利を保護するものとされています。

(2)保佐

選任の要件

精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である場合、つまり、精神上の障害により、自分の行為の結果について合理的な判断をする能力が著しく不十分な場合に申立により選任されます。

保佐人の権限

被保佐人は、日用品の購入その他の日常生活に関する行為を除き、保佐人の同意がなければ、以下の行為をすることができません。

  1. 1. 元本の領収・利用
  2. 2. 借財・保証
  3. 3. 不動産などの重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為
  4. 4. 訴訟行為
  5. 5. 贈与・和解・仲裁合意
  6. 6. 相続の承認・放棄、遺産分割
  7. 7. 贈与の申し込みの拒絶、遺贈の放棄、負担付贈与の申し込みの承諾、負担付贈与の承認
  8. 8. 新築・改築・増築・大修繕
  9. 9. 一定期間を超える賃貸借

(3)補助

選任の要件

精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である場合、つまり、軽度の精神上の障害により判断能力の不十分な場合に申立により選任されます。

選任の流れ
  1. 家庭裁判所への申立
  2. 家庭裁判所の調査官による事実の調査
  3. 精神鑑定
  4. 審 判
  5. 審判の告知と通知
  6. 後見開始 ※申立から審判までは3カ月〜6カ月程度の時間がかかります。
補助人の権限

被保佐人について保佐人の同意がなければできない行為(上記「保佐人の権限」の9つ)のうちの一部について、補助人に同意権が与えられるか、被補助人の特定の法律行為について補助人に代理権が与えられます。

(4)任意後見

任意後見の内容

任意後見制度は、本人が契約の締結に必要な判断能力を有している間に、将来自分の判断能力が不十分になったときに備えて、託したい後見事務と任意後見人を、公正証書による契約によって定めておく制度です。
したがって、今は特に問題なく生活をしているが、将来は認知症になってしまうのではないかと不安を抱いている人が利用するのに適しています。

任意後見契約においては、どの後見事務をゆだねるか、任意後見人を誰にするか自由に決めることができます。
なお、婚姻・離婚・養子縁組などの身分行為を任意後見契約に盛り込むことはできません。
任意後見制度では、成年後見制度と異なり、家庭裁判所は、本人があらかじめ選任しておいた任意後見人を家庭裁判所が選任した任意後見監督人を通じて監督するにとどまります。

任意後見の権限

任意後見人の権限は、任意後見契約に託したい内容を具体的に記載して初めて決まります。
契約で記載したほうがよい権限を大きく分けると、 「財産の管理」、「介護・生活面」のふたつに分けられます。
「財産の管理」については、不動産や預貯金の管理,年金の管理,税金や公共料金の支払いなどが考えられます。

「介護・生活面」は、要介護認定の申請に関する手続,介護サービス提供機関との介護サービス提供契約の締結,介護費用の支払い,医療契約の締結,入院の手続,入院費用の支払い,生活費を届けたり送金したりする行為,老人ホームへ入居する場合の体験入居の手配や入居契約を締結する行為などが含まれます。

任意後見契約の流れ
  1. 任意後見制度の利用を希望する人が、十分な判断能力の存在するときに、任意後見受任者と任意後見契約を公正証書により締結する。
  2. 公証役場が、任意後見契約を嘱託に基づいて指定法務局に登記する。
  3. 本人が精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分状況になった時点で、本人・配偶者・親族等が家庭裁判所に対し、任意後見監督人の選任を申し立てる。本人以外の人が申し立てる場合は、本人の同意が必要。
  4. 任意後見監督人が、任意後見人の事務の監督、任意後見人の事務について家庭裁判所へ報告等を行う。
法定後見と任意後見の違い

任意後見は、法定後見と違い、(A)ご本人が後見人を事前に選ぶことができます。
また、(B)任せる事務を決めることができます。

また、(C)任意後見と財産管理をセットで契約すると、死亡後に発生する事柄(葬儀会社の選定、供養方法の決定など)も任せることができます。
他方、任意後見人には、(D)成年後見人と違い取消権が認められませんし、(E)財産管理契約のみの場合には登記委任状の取得ができず不動産の処分が難しい場合もあります。

(5)財産管理契約

財産管理委任契約とは、自分の財産管理や生活上の事務について、他の人に具体的な管理内容を定めて代理権を与えるものです。任意代理契約とも呼ばれ、民法上の委任契約の規定に基づくものですので、財産管理委任契約は、当事者間の合意のみで効力が生じ、内容も自由に定めることができます。

財産管理委任契約は、成年後見と違い、精神上の障害による判断能力の減退がない場合でも利用できます。したがって、うるさい親族からガードしてもらうため今すぐに財産管理を始めてもらいたい場合、判断能力が低下する前から財産管理をしてもらいたい場合、死後の処理も依頼したい場合に有効な手段となります。
通常は、任意後見契約とセットで財産管理契約を締結することが多いです。

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